ブラジルにおける貿易・投資上の問題点と要望

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本表の見方
 
17. 知的財産制度運用
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
JEITA
日機輸
(1) 知的財産権保護の不十分 ・知的財産権の法整備は進んできている状況ではあるが、経済成長により、内外ともに特許出願数は増加し、審査の遅延及び審査の質(担当者によるバラツキ、レベルの差)は課題となっている。出願人にとっても安定した知的財産保護の取り組みに影響が生じる状況がある。 ・特許審査ハイウェイやASEAN特許審査協力(ASPEC)など、各国間協力を進めるとともに、利用促進を促し、審査滞貨の解消と、審査官への教育も進めて頂きたい。
    (対応)
・ブラジルで海賊版・不正輸入問題が多い理由として、高率の税金が挙げられ、正規の輸入品が海賊版の価格の倍以上になるが、政府は若者を主として海賊版不買キャンペーンを実施している。
・2004年12月、ブラジル政府は、官民合同の海賊版・知的財産侵害対策会議(CNCP)を設置して、模倣品海賊版対策についての戦略を策定している。
・2008年に中南米における現地日系企業の業種横断的な知的財産保護活動である“中南米IPG”を設立して、主にブラジルを中心として現地日系企業間の情報交換及び現地政府との交流を進めている。
・ブラジル模倣品・海賊版対策協会の推計によると、2009年におけるブラジル企業が被った模倣品・海賊版による被害総額は約200億ドルに上り、うち医薬品52.5億ドル、部品30億ドル、ソフトウェア22.5億ドル、たばこ20億ドル、燃料20億ドル、電化製品18億ドル等となっている。
・UATRは、『2010年スペシャル301条報告書』で、ブラジルを引き続き監視国に指定し、「ブラジル政府は、著作権侵害・模倣品問題への具体的な対策を講じ、執行措置を強化しているが、水際措置が甘く、抑止力のある刑罰の実施が不十分であるのに加え、著作権侵害・模倣品問題は依然として深刻な状態にある」としている。
・2009年以降、日伯貿易投資促進合同委員会の下に知財ワーキンググループが設置されており、日本側は伯側に模倣品の流通ルートなどを示し、取り締まり強化を要請している。
・ブラジルにおいては、産業財産権侵害罪についての刑事手続きは、権利者自らが捜査・起訴を主導しなければならない。刑事手続きについては、同一性商標の侵害だけでなく、類似商標やラベルによる侵害も刑事罪の対象となる。裁判管轄は、侵害行為地の州裁判所。
・2016年10月13日、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)貿易相は、BRICS首脳会議(2016年10月15〜16日開催、於:インド・ゴア)に先立ち、貿易投資に関する第6回BRICS貿易大臣会合を開催(於:インド・ニューデリー)し、相互の経済統合促進で一致した。非関税措置への取り組み、製品規格の開発、シングルウィンドウ通関、知的財産保護協力、サービス、中小零細企業対策、電子商取引、BRICSのWTOやG20における連携等の分野で緊密な経済協力を目指す。
日機輸
(2) 特許侵害製品の輸入差止規定の不備 ・税関による水際措置は、商標権侵害の製品を差し止めることを規定しているのみで、特許侵害製品の差し止めについては規定がない。
特許侵害製品が税関により輸入差し止めされたケースは非常に稀であると情報を得ている。
・特許侵害製品も積極的に輸入差し止めしてほしい。 ・産業財産法198条・「ブラジルの知的財産制度」日本知的財産協会
JEITA
製薬協
日機輸
(3) 特許出願審査・権利化の遅延 ・特許権利化までに平均で8〜9年かかる。特に、電気・電子分野では出願から10年を超えるケースもある。
2017年8月にパブリックコメントが求められたバックログ解消案(簡略化された手続きによる滞貨一掃案)など、バックログ解消に向けた取り組みが検討されているが、権利化に要する期間は依然として長い。
・ブラジルにおける特許や実用新案の審査の期間は10年以上と、他の新興国と比較しても非常に長く、ライフサイクルの短い製品について実質的な知的財産保護を得ることが困難となっている。
・ブラジル特許庁(INPI)は、日本特許庁との間の特許審査ハイウェイ(PPH)パイロットプログラム開始や、実体審査を行わない簡略化された手続(simplified procedure)の検討等、特許出願のバックログ解消を図っているが、いずれも医薬品分野の特許出願は対象外である。ブラジルは新薬のデータ保護期間がないにもかかわらず、ブラジルで新薬発売時に特許未登録が常態化しており、改善を求めたい。
・審査官を増やしていただきたい。各種セミナーによると、審査官を増やし、バックログを減らす施策を講じているとのことなので、その目論見通りに、権利化までの時間が短縮されることを期待する。
・他国との審査協力の促進などにより、引き続き権利化期間の短縮に向けた対策を進めていただきたい。
・TRIPS協定に従い、技術分野で差別することなく適時に特許付与して頂きたい。
・審査運用
日機輸
(4) 早期審査制度の利用条件の厳格 ・早期審査を要請するためには、下記のいずれかを満たす必要があるため、使いにくい。
―亟蠖佑個人で、60歳以上の場合。
⊇亟蠖佑竜可なしに第三者によって発明が利用されている場合。
E佻親探が財源取得の条件になっている場合(証拠が必要)。
・企業が活用できるように、早期審査の請求要件を変えてほしい。
例えば、対応外国での調査結果を提出したら早期審査を認めるようなルールができると、使いやすくなる。
・Resolution 132/2006
(http://www.wipo.int/
wipolex/en/details.
jsp?id=8389
)
    (参考)
・Resolution 132/2006
(http://www.wipo.int/wipolex/en/details.jsp?id=8389)
日機輸
(5) 審査請求順に基づく審査着手の必要 ・出願番号順に審査が行われている。そのため、早期に審査請求を行っても、あとから審査請求された、出願番号の早い案件の方が先に審査される。 ・審査請求が行われた順番に審査着手をしてほしい。
自動部品
(6) 技術援助契約の審査・登録・ロイヤルティ率上限規制 ・技術援助契約の審査・登録・ロイヤルティ率において以下の問題がある。
−INPIの審査期間が長く(直近の事例で、申請から認可が下りるまで約1年)、費用回収が滞る。
−契約期間が原則5年で、更新もINPIの裁量次第で、かつ1回限りしか認められず、開発費用を回収できないリスクがある。
−ロイヤルティ率の上限を一律5%とする運用がなされており、開発費用を回収できないリスクがある(Ordinance 436/58)。
・INPI審査期間の短縮、契約期間一律規制、ロイヤルティ率の一律上限規制など、不合理な法規制および不透明な当局運用の撤廃をして頂きたい。 ・Ordinance 436/58
JEITA
日機輸
(7) 知的財産情報の開示不十分 ・知的財産の権利化・権利活用ニーズが高まる新興国において、裁判・訴訟件数等の統計情報や出願データベースの整備が不十分のため、正確な他社特許リスクを把握できない。 ・先進国特許庁との連携協力を進め、早期DBの整備を進めていただきたい。
製薬協
(8) 医薬品関連特許の制限 ・特許対象として認められる医薬品関連発明を制限している。
ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)により特許審査が行われ、INPIによる審査と重複審査が行われ、登録までに時間がかかる。
・産業財産権法8条に規定する特許要件を具備し、10条に規定する不特許事由に該当しない限り、特許を認めて頂きたい。
・ANVISAによる重複審査をやめて頂きたい。
・ブラジル産業財産権法8条、10条及び第229C条
日機輸
(9) ブラジル特許出願継続期間中の更新料(Renewal Fees)の支払い ・ブラジル特許出願が継続している間は、更新料(Renewal Fees)をブラジル特許庁に支払わなければならない。年次で更新料を支払う現状では、最終的に特許出願を放棄した場合にそれまでに支払った費用が無駄になる。また、技術分野によっては存続期間内の多くの時間を審査されずに更新料の支払いを行っていることになる。 ・日米等の主要国のように、更新料は登録後に支払うように法改正してほしい。あるいは、登録時にまとめてそれまでの更新料の累積分を支払うことができるようにしてほしい。 ・工業所有権法令12章 第84条
日機輸
(10) 米伯間の特許審査ハイウェイ(PPH)の活用困難 ・米伯間の特許審査ハイウェイ(PPH)の対象は、最先の優先日が米国もしくはブラジルにおけるものに限られていることに加え、ブラジル側は石油、ガス等の分野に関する出願のみを受け付けるため、日本企業が活用しにくい状況にある。 ・前者については、PPH MOTTAINAI (https://www.jpo.go.jp/
system/patent/shinsa/soki/
pph/pph_mottainai.html
)のケース2のように、JPを基礎とするUS出願の審査結果を活用することを検討してほしい。
・後者については、対象とする技術分野の範囲を広げてほしい。
http://www.uspto.gov/
sites/default/files/
documents/PPH_MOU_
and_Workplan_USPTO-
INPI.pdf

日機輸

(11) INPI-JPO間の特許審査ハイウェイの時限制 ・2017年3月に発行されたINPI-JPO間の特許審査ハイウェイ(PPH)は、2019年3月31日までと時限的なプログラムとなっている。 ・試行期間終了後も、何らかの形で審査促進を図る手立てを設けていてほしい。
    (参考)
・日ブラジル間のPPH(2019年4月1日以降)
2019年4月1日から、JPOとINPIは、新たに化学・バイオ分野の一部も対象として、PPHの試行をさらに2年間実施。これにより、日本からINPIへの出願のうち、PPH申請の対象となる出願は、約33%から約56%に拡がる。
<PPH申請の対象となる技術分野>
INPIが受け付けるPPH申請の対象となる出願の技術分野は、従前のIT分野及び自動車関連技術を中心とした機械分野に加え、高分子化学、冶金、材料、農芸化学、微生物、酵素などが追加。
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
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