インドネシアにおける貿易・投資上の問題点と要望

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本表の見方
 
14. 税制
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
JEITA
JPETA
フル工
自動部品
日機輸
(1) 税務調査・否認・追徴課税・還付の不透明・恣意性 ・ロイヤルティ、ブランドフィーなどの否認や移転価格税制で法外な追徴の決定。あるいは非現実的な否認で、多額の資金が凍結される。不服申し立て、裁判は行うが、長期間の資金が凍結。税務調査において十分な説明と議論なしにロイヤルティ、ブランドフィー等モノを伴わない取引が税務否認されている。
・親会社が提供する経営指導、債務保証に対する対価の支払いに関し、インドネシアに所在する子会社においては、すべて配当とみなされ損金処理が認められず追徴課税が発生した。高いコストを払い文書化を遵守しているが、調査段階で深い分析もなく課税されているのが実態と思われる。
・法人税を還付請求した際に毎回税務調査が入るが、調査結果に統一性がない。異議申立を行う場合、時間及び税務対策費用がかさみ事業遂行に支障が出かねない。(2017年監査未実施のため、状況を再確認予定)
・税務当局に対しVAT還付請求をすると必ず税務調査が実施されるが、その調査対応に時間を要し、結果として還付金の入金までに時間が掛かる。
・税務当局の独断により、進出する日本企業が税収確保のための不条理な税還付額の再納付要求や突然の資格停止処分を受けた事例があった。
・税務局の独自判断による必要利益率での課税。開発費等の役務提供の対価性が認められず否認。
・インドネシアの歳入の85%以上は税収で賄われている為か、インフラ投資等に伴い、税務当局の税収目標が年々高まっている。その為、税務調査が一層厳しくなっており、強引な課税執行に伴う税務リスクが高まっている。弊社は影響が出ていないが、他社では大規模且つ非合理な課税を受けている。
・税務監査において不合理な内容で高額の追徴を受け、先払いしないと異議申立〜税務裁判で大きなペナルティリスクを負わされる。
・本社経理部門より国税庁等に対して現状の説明を行い、国家間の問題に持ち込むべきロビー活動を実施中。
・十分な説明と議論をした後、公正に判断して欲しい。

・移転価格文書に対する十分な検証プロセスを経た上で、納税者が理解可能な課税説明を頂きたい。
・税制の整備。
・解釈の統一。
・VAT還付期限の設定と税務調査実施要件の緩和。
・税務当局の独断による税徴収など、日本企業を含む外国企業の現地進出に際する阻害要因への対策。
・解釈の統一。
・適切な課税判断。

・税務調査の透明性の確保。
・税務当局との適切なリレーションシップ。
・他社事例等の展開等。

・税務署の徴収ノルマを廃止。税務監査プロセスの客観的合理性の確保。
・インドネシア税法全般
・所得税法
・国税通則法
・モラル
    (対応)
・2000年11月、政府は脱税者に対し厳しい法的手段をとって徴税強化に乗り出す方針を明らかにした。
・2003年7月に開催された第6回JJC・政府間政策対話全体会合で、社用車及び携帯電話の損金算入コストについて規則が不明確であり、税務官により恣意的解釈がなされている点について、新規則(KEP-220/PJ/2002)が出されて解釈が明確化され改善されたことが確認された。
・2008年9月2日、国会で可決された所得税改正案により、徴税強化のため納税者番号(NPWP)を保有していない個人納税者に対して割増して源泉徴収にする措置を導入した。
・2009年1月1日より施行される2008年9月2日所得税改正案が国会で可決された。累進税率が一本化され、2009年28%、2010年25%となる。また、受取配当金課税について、最高10%のファイナルタックスの源泉分離方式とした。
    (改善)
・2003年7月に開催された第6回JJC・政府間政策対話全体会合で、改善点として納付者からの異議・不服申立等に対応する専門チームが租税総局内に設置されたことが確認された。
・2004年に就任したユドヨノ大統領は、「公正な徴税」を掲げ、納税額が多い上位200社への調査を指示するなど対策を講じている。
・2004年1月、CMEAプレスリリースは、「租税及び関税行政改革措置」に関するPI No.5/2003の実施の進展に関し「国税長官(DGT)は納税者に対するサービスの租税行政と質の向上を図る政府の努力の一環として納税者の権利の許可に関する指令を発した」と報じた。
・JJC「課税問題小委員会」報告によると、GOIに対する要望についての成果(2004年3月現在)は以下の通り。
1) コンピュータ関連の資産の耐用年数の短縮
2) その他資産のグループIII分類(耐用年数16年)申請手続の透明化
3) 会社所有車及び携帯電話に関する控除可能費用の明確化
4) 国税総局におけるコンサルティング専門窓口の設置
5) 業務使用の携帯電話、セダン車の損金算入ルールの明確化
6) 新法令の細則、周知期間、職員等への教育徹底を努力
7) 法令の適用開始日の明確化は確保されており、不合理な法解釈の排除および職員等の教育訓練に努力する
8) Maklon(委託加工)サービスに関する源泉徴収税率の引下げ可能
9) オフショア取引のVAT課税対象外であることの明確化
・2004年8月、CMEAのプレスリリースは、透明性の問題に対処するPI No.5/2003の実施の進展について以下の通り報じている。
1) 租税ウェブサイト:http://www.pajak.go.id/の創設、不満に対処する国家オンブズマン委員会の創設
2) 租税規則の解釈の明確化と社会化を企図した内部ワークショップ:40回、同一目的で企図された200の対外ワークショップが開催された。
・税務調査に関する新規則並びに税務調査手法の新スタンダードが公布された。(2006年SIAP報告書)
・年々改善されている。還付期間も半年前後となっており、指摘もリーズナブルな内容で、2007年より賄賂の要求もない。
・2008年初から施行の新関税通則法に異議申立期間中の税徴収が強行されないことが規定された。
・2018年4月、インドネシア国税総局は、過払い法人税及び付加価値税の早期還付制度を改定し、一定の要件を満たす国内法人に対し、従来の10倍となる10億ルピアまでの過払い額を税務調査前に還付する仕組みを導入した。
日機輸
(2) 前払い法人税徴収の重い負担及び還付の長期化 ・インドネシアでは、物品を輸入する際に、法人所得税の前払いとして、輸入価格の10%(2015年は7.5%)を納付する必要がある。また、業績悪化等により、最終的な納付額が、前払い法人税より、小さくなった場合、一般的に還付されるのは、申告から1年後以上となるため、企業のキャッシュフローに大きな影響がある。また、還付申請の場合は、例外なく税務調査がはじまるため、さらに還付を受ける期間が長期化する。
・前年度の納税額相当は毎月予定納税をしているにも拘わらず、輸入に対して2.5%〜10%という法外な前払法人税を徴収され、還付請求すれば監査を実施して逆に追徴してくる。
・多額な資金負担となるので、廃止して頂きたい。
・予定納税制度があるので、前払い法人税は不要。制度廃止を強く要望する。
・インドネシア所得税法22条(PPH22)
・インドネシア所得税法25条
日機輸
(3) 不当な税金未還付 ・インドネシア国内の税収減少に伴う不当な還付否認(税還付申請書におけるミスインプットに対する修正否認、海外への支払いに対する還付否認等)、それに伴う税務コンサルへの費用負担拡大、また内部管理工数の増大。 ・税務局への対応強化と妥当な税務判断実施の促進。 ・インドネシア税制
日機輸
(4) 貿易企業のVAT登録(PKP)剥奪問題 ・2016年中旬、ある税務署管轄の貿易企業(複数)に対して、「PKPにおける業種はTradingでなくTrading Serviceであるべきである。不正な業種登録をしている為、VAT・前払輸入法人税の控除/還付を受ける資格がない」として、対象企業のPKPが突然抹消された。
(尚、VAT・前払輸入法人税の控除/還付は法的な取引形態に応じて権利が発生するものであり、PKPの業種は関係ない。)
さらに「PKPの復活を希望するのであれば、過去数年間の法人税還付金・VAT控除/還付金を支払うように。」との極めて理不尽な要求あり。
PKPが抹消されたことで、Tax Invoiceが発行できず、尚且つVAT・前払輸入法人税の控除/還付を受けられないという、事業の存続に関わる事態に陥った。
被害企業一同にて大使館(経由日本政府含む)等の協力も得ながら税務署、尼国大臣への抗議等を行った結果、当該抹消は事前の調査という必要な法的プロセスを踏んでいないこと等から同税務署の上位税務署からの指示により、当該抹消を取り消す旨の通知が出された。
PKPは復活したものの、引き続き税務調査等のプロセスにおいて、同様の理由で多額の更正を迫られる懸念あり。
・必要な法的プロセスを経ずに企業に甚大な損害を与える理不尽な徴税執行を是正し、法令に則った透明性の高い運用を徹底して頂きたい。
JEITA
(5) Consignment実施における国内法の未整備 ・得意先から、タイやインドネシアでのConsignment stockを持つよう要求されることが多いが、非居住者である場合、障壁や懸念が大きく対応できない。
AECの発足により、ヒト・モノ・カネの自由化を謳いながら、PEの問題であったり、外国企業に対する事業ライセンスであったり、障壁は残っており、各国国内法の整備が追いついていない。その結果、ASEAN域内でのより自由度の高いFlexibleな事業展開の足かせになっている。
・AECやFTAといった国際的な枠組みに準拠した各国国内法の迅速な整備。
JPETA
(6) 租税条約上の債務者主義採用による駐在員事務所における使用料の源泉徴収義務 ・インドネシアとの租税条約において使用料の所得源泉地として債務者主義が採用されていることにより、駐在員事務所で賃借している車、コピー機の使用料に源泉徴収義務が生じている。一方、現地業者から日本国の税金負担の理解は得られず、納税義務者である当社の負担にならざるを得ない状況になっている。 ・租税条約上の債務者主義撤廃による使用料の源泉徴収義務の廃止。 ・租税条約
JEITA
日機輸
(7) 過少資本税制 ・純資産の4倍を超える借入金部分に対する金利の損金算入ができない。2016年1月以降開始事業年度より適用されている。 ・規制緩和または撤廃。 ・Ministry of Finance
日機輸
(8) 統括会社への合算課税のメリット不足 ・統括会社を設立しても、グループ会社全体での合算課税のメリットが無い。 ・新政権の自由化の流れを受けて、合算課税を実現することで、統括会社設立のメリットを得る。
日機輸
(9) BEPS対応移転価格文書化規則実施の猶予期間不足・不透明 ・2016年度末に、移転価格税制文書についての新たな財務大臣規定が公布され、即日施行された。本規定で求められるMaster File(MF)、Local File(LF)の準備期限が課税年度(2016年度)終了後4ヶ月以内(12月期決算会社は2017年4月末、3月期決算会社は2017年7月末迄)と世界的にも異例の早さに設定された。また、規定内容が不明瞭、且つインドネシア固有の要求も含まれており、特に海外本社を持つ企業はMFについて、インドネシアのみの為の個別対応が必要な状況となった。
その後も規定内容が不明瞭なまま期限を迎え、税務当局への文書提出を余儀なくされている状況であり、徴税執行の現場で悪質な運用がなされる懸念が残る。
・インドネシア財務省規則No.213/PMK.03/2016(PMK-213)においては、一定のインドネシア企業は移転価格文書化規定に従ってローカルファイル・マスターファイル・国別報告書をインドネシアで提出することが求められている。ローカルファイル・マスターファイルについては、事業年度末から4ヶ月以内、国別報告書については12ヶ月以内に作成することが求められている。
・2016年12月30日付けでインドネシア財務省より移転価格文書に関する新規定が発行された。その中には、移転価格文書を期末日以降4ヵ月以内に準備すること、同文書作成日を記載したステートメント・レターを添付することが規定された。
弊社子会社の決算日は12月31日のため、2017年4月30日に同文書を準備しなければならず、これほどの短期間での対応は実質的には不可能である。
・2016年12月に税源浸食および利益移転(BEPS)のガイドラインが適用され、移転価格文書化に関する新たな財務大臣規則が公布、即日施行された。移転価格文書の作成範囲が拡大されると共に、マスターファイルやローカルファイルの作成期限が、課税年度終了後4ヶ月以内とされた。
・通常、最終親会社のBEPS対応期間に合わせた形でマスターファイル等の提出義務が発生するが、日本より1年前倒しで適用されるようになっている。
・「マスターファイル」についてインドネシア語での作成が義務づけられており、日本所在の最終親会社が作成したマスターファイルを翻訳する必要がある。
提出期限についても税務年度終了後4か月(日本は12か月)となっており、親会社での作成スケジュール上、対応が困難。

・マスターファイル(MF)は事業年度終了後4ヵ月以内に作成すること、同文書作成日を記載したステートメント・レターを添付することが規定されているが、子会社が12月決算の場合、4月末に同文書を準備しなければならず、他国と比べ非常に短期間である。また、言語はインドネシア語でなければならない。
・新たな規定の公布に際しては、最低限の周知・準備期間を設けて頂きたい。
・規定内容の不明瞭な部分をクリアにして頂きたい。
・マスターファイルの4ヶ月以内の提出期限は、他国と同様の12ヶ月以内に延長して頂きたい。
・経過措置や宥恕規定、ペナルティが課されないような手当てをお願いしたい。
・書類準備期間4ヶ月は日本(1年)と比べても著しく短く、特に親会社が作成することになるであろう、マスターファイルについては対応極めて困難。納税者側の状況や実務を考慮した法令の制定・施行を望む。
・他の国と同様に最終親会社に合わせた形で提出できるようにしてほしい。作成言語も英語でお願いしたい。
・提出期限を日本並みの12ヵ月とし、英語での作成を認めるよう、法改正または執行上の配慮をおこなうよう、インドネシア当局に要請いただきたい。
・期間の宥恕規定やペナルティが課されないような手当てをお願いしたい。
・言語は英語も可としてほしい。
・2016年12月30日付公布、「OECD税源侵食および利益移転」ガイドライン
・インドネシア財務省規則No.213/PMK.03/2016(PMK-213)2016年12月30日公布
    (対応)
・2018年6月25日、「日本-インドネシア税務交流会」で講演したインドネシア国税総局のロベルト総局長は、「OECDの行動計画に準拠してBEPSへの対応を進めていく」ことを表明した。
フル工
自動部品
(10) タックス・アムネスティ(租税特赦法)運用開始 ・タックス・アムネスティを使用して過去の未申告資産を税務申告した個人及び企業は該当年度の税務調査を免れることが一因で、税務調査の対象が未申告資産を保有していない優良企業に向けられている。
また、税務調査の際、担当税務官に難癖を付けられて追徴課税や税務裁判へ発展するケースが増えている。
・税務調査の透明性の確保。
・税務当局との適切なリレーションシップ。
・他社事例等の展開等。
・2016年法律第11号(租税特赦法)
・大臣規則No.118/PMK.03/2016

フル工
自動部品

(11) 個人所得税に関する税務調査への対応の負担 ・インドネシアの税収の26%は個人所得税で賄われており、年々税務調査が厳しくなっている。2017年度の税務調査はタックス・アムネスティを使用しなかった納税者がターゲットになる模様で、必要となるエビデンスを事前に準備し調査に備える必要がある。前年までは赴任前に取得したインドネシア国外で保有している資産の申告はしていなかったが、今後は申告の必要がある模様。また、税務調査時には納税者本人が税務当局担当者とのミーティングに参加しなくてはならなくなる模様で、駐在員及び通訳の負担が増えることが想定される。 ・適切な税務申告の指導。
・税務当局とのリレーションシップ。
・Circular Letter No SE-11/PJ/2017
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
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