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2001年12月12日判決号

外国のあるブランドグループ内の会社から、輸入した
純正ブランド品であっても、その会社がそのブランド米国商標権者と
親子関係がなければ、米国商標権侵害となり得る


Vittoria North America, LLC v. Euro-Asia Imports Inc.,
10th Cir., No. 00-6277 (Dec.12, 2001)


1.概要

 関税法施行規則の例外規定により、外国メーカーの子会社など外国メーカーの支配下にある会社は、米国商標権者であっても、親会社である外国メーカーの承認の下で輸入された製品に対し商標権を行使ことはできない。しかしながら、緊密な関係をもっていても、子会社ではなく独立した会社の場合は、商標権を行使することができることを、第10巡回区控訴裁判所が明らかにした。したがって、あるブランドグループ内の会社から、輸入したブランド品であっても、米国商標権者と同一会社か親子会社でなければ、米国商標権侵害となり得る。


2.事件の経緯

 Vittoria North America(VNA)社とVittoria Italy社はVNA社をVittoriaタイヤの米国の排他的販売代理会社とする契約を1992年に結んだ。さらに両社は1999年2月に米国における米国商標「Vittoria」に関する全ての権利とその商標の使用に関る営業上の信用(good will)を、訴訟を提起する権利を含めて、Vittoria Italy社からVNA社へ譲渡する契約を結んだ。契約書は「本契約の目的は、譲受人が侵害者及びVittoria商標製品を許可なしに輸入する者に対して法的手段に訴える権限を与えるものである」とする一方、Vittoria Italy社は、30日の書面通知の上で商標及びそれに付随する営業上の信用を取り戻す権利を保有する旨の条項を有していた。

  VNA社は、自社の許可を得ることなくVittoriaブランドタイヤを輸入するEuro-Asia Imports (EAI)社に対して、商標権の侵害で提訴した。EAI社は1980年代から海外のVittoriaブランドのタイヤを輸入していたことを認めた。VNA社は損害賠償の請求と輸入の差止めを求めた。


 地裁は、VNA社がグレーマーケットに関する保護を受けるためには、(1)VNA社が米国で設立されたこと、(2)米国Vittoria商標を有すること、(3)米国特許商標庁に登録されていること、(4)EAI社がVNA社の合意を得ることなくVittoriaブランドの製品を米国に輸入したこと、を立証しなければならないが、争いのない事実は、これらを認定するに充分であると判断した。そして、地裁は、「Vittoria」は米国登録商標であり、Vittoria Italy社はその全ての権利をVNA社に譲渡し登記されこと、VNA社はVittoria Italy社の子会社ではなく、またその役員も全て異なっていること、EAI社がVittoriaブランドのタイヤを輸入して販売していたことを、争いのない事実と認定し、これらの事実は、VNA社の間税法上の保護を受ける権利の存在を示しているとして、VNA社の主張を認める部分サマリ・ジャジメントを下した。地裁は、EAI社はこのサマリ・ジャジメントを不服として第10巡回区に控訴した。

 第10巡回区は、地裁の判断を支持したが、Ebel判事の起草による判決の概要は次のとおりである。


3.第10巡回区のデシジョン

 まず、商標権の移転に関しては、EAI社は、譲渡契約においてVittoria Italy社が30日の書面通知の上で商標及びそれに付随する営業上の信用を取り戻す権利を保有するとしていたこと、Vittoria Italy社が米国で販売を続けたことを指摘し、VNA社の商標権は有効ではないと主張した。しかし、単にこれらの事実があることにより、譲渡契約が虚偽のものであるとは言えない。

 またEAI社は譲渡契約は営業上の信用の譲渡を伴うものではないから無効であると主張した。さらにEAI社は自社がVNA社よりも長くVittoriaブランドのタイヤを販売し、VNA社から商品を得たことがないことを指摘した。しかしVNA社は商標使用の間、広告やプロ選手のスポンサー、トレードショーの参加、6000のディーラーへの販売促進のためのセールス担当ネットワークを展開するなど、当該商標の高級レーシングタイヤとしてのイメージを創るために相当の手段をとっている。一方EAI社はVittoriaブランドに関してそのような行為は行っていない。このような事実から、VNA社への商標権の譲渡契約は、営業上の信用の譲渡を伴うものであり有効である。

 関税法施行規則19 CFR 133.23(d)(1)は、米国商標の所有者、親会社または子会社、米国商標権者と共通の支配(control)の下にある者の承認の下で付与された商標であることを輸入者が証明した場合を例外 (Common Control Exception)としている。EAI社は、VNA社がVittoria Italy社と同じ会社、あるいは親会社または子会社ではなくても、証拠は共通の支配を示すのに充分であると主張した。ここで規定されている「支配」は、親会社が子会社に対して通常行使するような支配を意味する。

 EAI社は、(1)VNA社とVittoria Italy社が設計、開発及び販売に関して協調している、 (2)VNA社とVittoria Italy社が、現在及び将来の製品の範囲について共同して決定している、 (3)Vittoria Italy社が、Vittoriaブランド商品を米国の装置メーカーに販売している、 (4)Vittoria Italy社がVNA社の広告料の相当部分を負担し、VNA社のマーケティングに一定の支配を有している、 (5)Vittoria Italy社がVNA社が米国においてどの商品ラインを販売するかを決めている、 (6) Vittoria Italy社がVittoriaブランド商品のVNA社の保証責任について肩代わりしている、 (7)Vittoria Italy社のカタログが、VNA社を米国での販売会社としてリストアップしている、 (8)Vittoria Italy社のCEOがVNA社の人事を決定している、という点により、共通の支配に関して、事実に関する真正な争いがあると主張している。

 しかしながら、これらはせいぜい緊密なビジネス関係を示しているにすぎず、共通の支配を示す証拠は示されていない。独立しているが、緊密な関係をもつ会社が、金銭的または人的資本を出し合うことはよくあることである。(8)についても、Vittoria Italyが、VNA社の人事について要請したemailがあるに過ぎず、支配した証拠とは言えない。

 共通支配の場合、外国のメーカーは単に自社製品を誰が買うことができ、どこに輸出することができるかを制限することにより米国でのマーケティングを守ることができる。これに対し、本件のように、契約でのみ外国のメーカーと提携している会社の場合、これと同じことは言えない。提携会社はそのような支配を望むかもしれないが、外国のメーカーが消極的であるときに、提携会社はグレーマーケットから守るように求めることはできない。

 またEAI社はVNA社がVittoria Italy社の意向で創られたと主張するが、VNA社の前身会社とVittoria Italy社との契約が対等な交渉の結果ではなかったと認定するに足る証拠はない。また、Vittoria Italy社がVNA社の行動を支配する法的権限を有していたとの証拠もない。このようにEAI社は、共通の支配の例外を適用すべき、事実に関する真正な争いがあることを示していない。

 また、EAI社は地裁がVNA社の反論に対する再反論の機会をEAI社に与えなかったのは誤りであったと主張している。しかしEAI社はVNA社の反論において、新たな法的議論を提起したことを主張しているわけではなく、しかもVNA社が反論とともに新たに提出した証拠は地裁において採用されていないか、先の証拠と重複するものである。また、EAI社は再反論が許されたら、どのような証拠により、サマリ・ジャジメントの結果が異なったかを示していない。したがって、地裁の誤りは認められない。

 よって、地裁の部分的サマリ・ジャジメントを維持する。


4.解説

 並行輸入に関しては、米国では属地主義がとられており、米国商標権者は、国外の純正商標の付された商品であってもその輸入を阻止することができる。これは、国外において付された純正商標は、外国法の下でのものであり、その商品の米国への輸入は、米国の商標権者の許可が必要である。

 関税法施行規則(19CFR)は133.23は、国外で純正商標を付したのが(1)米国商標権者と同一、(2)米国商標権者の親会社もしくは子会社、または(3)米国商標権者と共通の所有または支配(コントロール)にあることを証明した場合は、例外となることを定めている。

 本件では、EAI社はVNA社がVittoria Italy社と共通の支配の下にあると主張したのであるが、第10巡回区控訴裁は、ここで規定されている支配は、親会社が子会社に対して通常行使する支配を意味すると限定的に解釈し、前記(3)は第(2)と同程度の支配であるとした。

 VNA社は、Vittoria Italy社のカタログに、Vittoriaグループの一員と記載されていたが、EAI社のVittoria Italy社からの輸入を、米国商標権侵害とする主張が認められた。この事件は、米国外の商標権者と米国商標権者の支配関係を調べておかないと、米国外の商標権者からの輸入であっても侵害となり得ることを示している。

(木梨 貞男)

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