EUにおける貿易・投資上の問題点と要望

<-BACK
本表の見方
 
17. 知的財産制度運用
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
JEITA
日機輸
(1) 私的複製補償金制度の問題 ・私的複製補償金の支払義務がありながら支払をしない業者が現実に多数存在するとの話がある。かかる事実は、誠実に支払いを行う事業者が競争上不利な立場に立たされることを意味する。
・ディレクティブ第5条2項(b)では、公正な補償(課徴金)には、技術的手段の適用・不適用を勘案することが求められているが、これを国内法に明示的に反映していない加盟国がある。
・私的複製補償金制度については、私的複製に使われない場合(汎用品の存在・メディアの個人的使用、業務利用をいかに適切に除外するかなど)も対象となっていること、ライセンス対価との二重払問題、複製権を主張しない権利者の存在、分配にまつわる問題など、様々な問題点が指摘されているところである一方、デジタル世界の発達により補償金制度に頼らない創作者への対価の還元が可能となるはずである。
上記を踏まえた上で、現状の補償金制度は加盟国毎に異なっているため、特に越境取引の場合はある製品に二重に補償金がかかったり、補償金が安い(あるいはない)国の事業者が有利な立場に立つなど、本制度が製品の企画販売流通の足かせになっているとともに、域内単一市場の形成を妨げる要因となっている。また、煩雑な補償金制度を加盟国毎に調査・検討をしなければならず、事業者の実務的にも過度な負担がかかっている。
・多くのEU加盟国において、私的複製から生じる著作権者への補償として著作権補償料制度が導入されているが、料率が加盟国間で不統一であり、域内市場の達成の妨げとなっている。
・2010年10月に欧州裁判所の判断が出された(C-467/08)。
ー然人が使用する場合を除いて、業務用製品に対して私的複製補償金を課すことはディレクティブに反すること。
∋篥複製補償金は例外として許された適法行為たる私的複製により生じた損害の補償であること。
私的複製補償金は、私的複製の受益者たるユーザーが最終的に負担すべきことがいわれた。
しかし、各加盟国においては本判決は必ずしも実現されておらず、多くの加盟国で業務用製品への課金が現在も行われている。また、一部の加盟国では、一旦業務用製品も含むすべての私的複製可能機器にも課金をした後、事後的に業務用製品にかかる補償金を返還する制度を導入している。しかし、本制度は一時的であっても本来支払う必要のない補償金の支払を強制されている上、返還手続にかかるコストにより、事業者には大きな負担となっている。

・Directive及び欧州裁判所判決(C-467/08等)から、私的複製補償金の最終負担者は私的複製を行うユーザーである。しかし、補償金制度を有する多くの加盟国では、ユーザーが購入する私的複製機器にいくらの補償金が課金されているかが、ユーザーに対して通知されていない。そのため、ユーザーは自己が不当に高い補償金の支払いを強いられていることを認識していない。
・現状の制度運用を前提とした場合、支払義務を履行していない事業者と誠実に義務を履行している事業者との公平を図る措置を講じるべきである。
・各加盟国で、技術的手段の適用・不適用を勘案することを徹底してほしい。
・【制度的観点】
−私的複製補償金制度を廃止してほしい。創作者への対価の還元は私的複製補償金制度ではない別の方法によるべきである。
【実務的観点】
−現状の制度運用を前提とした場合、各加盟国の補償金対象機器・媒体及び金額または率に関する情報を、各加盟国の規定に忠実な形での英語でECウェブサイトに掲載してほしい。
−なお、かかる英語掲載を各加盟国単位で実施する場合は、信頼性の観点から各加盟国政府のウェブサイト上での掲載と、アクセス容易性の観点からECウェブサイト上で各加盟国のアクセス先の表示をしてほしい。
・早期に加盟国間での制度統一を要望する。長期的には、現行システムに代えて、著作権者が侵害者から直接補償を徴収するシステムの構築を要望する。
・左記問題点はVitorino Recommendationsでも指摘されている通りである。Vitorino Recommendationsに基づき、ECがガイドラインを制定するなど指導力を発揮し、各加盟国において左記判決が早期に実施されるようにしてほしい。
・各加盟国は、複製機器/媒体にかかっている補償金額をユーザーに対して明示するように義務付けるべきである。
・Directive 2001/29/EC
・ECJ (C-467/08 - "Padawan")
・EU著作権補償料制度
    (参考)
・現在、英国、アイルランド、キプロス及びマルタを除く殆どのEU加盟国で私的複製補償金制度(Levy制度)を導入している。情報社会における著作権及び関連する権利の特定の側面の調和化に関する指令(Directive 2001/29/EC、以降著作権指令)の第5.2(b)条では、技術的保護手段(TRMs)の採用を考慮に入れて公正な補償金を査定するよう義務付けている。しかし、近年のコピー防止技術の出現にもかかわらず加盟各国による著作権指令の国内法化の現状を見るところlevy制度に第5.2(b)条が十分に反映されていないように見える。
    (対応)
・欧州委員会は著作権補償金改革を2006年の作業計画に中に入れ、関係者へのアンケートを行ったりしたが、改革は一向に進んでおらず、ついに2007年に入って改革計画を取りやめにした。
・2010年11月21日、EU司法裁判所は欧州著作権指令の「公正な補償」に関し、PADAWAN社に対するスペインの業務用製品に対する私的補償金支払い命令を巡る訴訟において、「公正な補償」はEU内のすべての加盟国で統一的に解釈されなければならないこと、補償される金額は私的複製の例外により著作権者が被る損害を基準に計算されるべきであること、私的複製以外に使用される製品(官公庁や企業の業務用品)に対して補償金を課すことは指令に適合しないことなどを判示した。
・欧州委員会は2012年7月、著作権の共同管理と越境ライセンスに関する指令案を発表した。著作権管理団体に、技術的能力、著作権使用料の支払い迅速化などを義務付ける内容になっている。
JEITA
ベア工
自動部品
日機輸
(2) 特許権利化の遅延と出願費用の支払い継続 ・日米欧の三極特許庁の最終処分期間は、日本、米国の約2年+αと比較しても、欧州は約4年かかり格差がある。また、遅延と同時に高額な出願維持費用が毎年かかるため、出願人にとって大きな負担となっている。日欧間の特許審査ハイウェイの試行開始(2010年1月)に伴い、審査速度、費用低減への効果を期待している。
・年次で出願更新料を支払う現状では、最終的に特許出願を放棄した場合にそれまでに支払った費用が無駄になる。
・日本や米国の制度では、特許が登録されてから特許の維持に必要な「維持年金」支払いが生じるのに対して、欧州では 登録前で審査が開始されておらずとも、出願維持年金の支払いを要求される。かつ、日米と比べてEUは特許登録されるまでに時間がかかるため、出願維持費用の負担がなお大きい。
・欧州では、特許出願後、審査開始前でも出願維持年金の支払いを要求される。その上、日米より特許の登録までに時間がかかるため、出願維持費用が大きな負担となる。中国も2010年に維持年金を廃止している。
・左記、特許審査ハイウェイにより、最終処分期間の改善、出願維持費用の負担軽減の効果を明示して頂くとともに、引き続き権利化期間の短縮に向けた対策を進めていただきたい。
・日米等の主要国のように、更新料は登録後に支払うように法改正して欲しい。あるいは、登録時にまとめてそれまでの更新料の累積分を支払うことができるようにして欲しい。
・特許登録前の出願維持年金の支払いを不要としてもらいたい。
・出願維持年金を廃止して欲しい。
・審査運用
・欧州特許条約
・出願維持年金制度
・欧州特許付与に関する条約 第86条
・Patent examination practice in EPO
    (対応)
・特許審査ハイウェイ(試行)プログラムは、EU関係国との間では、日本と英国の間で本格運用、日本とドイツ、デンマーク、フィンランド、オーストリア、ハンガリー、欧州特許庁、スペイン、スウェーデン、北欧特許庁、ノルウェー、ポルトガル、ポーランドとの間で試行運用されている。
JEITA
日機輸
(3) 権利化の高コスト、訴訟制度の煩雑さ ・EUにおいては、特許認可後に各国言語による翻訳が必要なため、国数によっては翻訳コストなどによる総費用が米国等と比較し非常に多くかかり、欧州での研究開発が進みにくい一因となっている。また各国別の訴訟制度についても出願人にとって利用しにくい状況となっている。 ・円滑な権利取得推進に向け、EU共同体特許の実現と、欧州及びEU特許裁判所(EEUPC)の設置を実現していただきたい。
・2012年12月に統一特許制度および統一特許裁判所についての規則案が欧州議会によって承認されたが、品質、コストの両面でユーザーにとって使いやすい制度設計を進めて頂きたい。
・European Patent Convention (EPC)
    (改善)
・単一のEU特許制度に関する方針の部分合意: 2009年12月の理事会で、単一のEU特許実現のための主要要素・方針について合意がなされ、大きな前進となった。合意内容は、核となる議論の一つであった特許関連の訴訟を一括して扱う裁判所「欧州・EU特許裁判所(EEUPC:European and EU Patents Court)」の設立も含まれる。
・EU特許の翻訳言語に関する理事会規則案: 2010年7月発表。単一EU特許制度確立に向けた最後の要素、翻訳言語に関する取り決めを決定する提案。既存の欧州特許制度に基づき、欧州特許局の公式言語である英独仏の3カ国語のうちいずれかによる審査および付与を提案している。さらに、EU特許制度をより利用しやすいものにするための付随的な手段の確立についても合意がなされるべきだとされており、EUの公式言語すべてをカバーする質の高い自動翻訳機を利用可能なものにすることなどが提案されている。
・2012年12月、規則は採択され、2013年3月、スペインは無効を求めて欧州司法裁判所に提訴したが、2014年11月、裁判所はスペインの訴えを却下した。
・EU単一特許制度に関しては、紛争に関する裁判所の場所に関して本部機能をパリに置き、特定分野事案を扱う専門の機関をロンドンとミュンヘンに置くことで合意が成立し、2014年にも単一特許制度が創設されることとなった。
日機輸

(4) 審査期間の長期化 ・EPOによる特許審査期間が長期化していており、適正なタイミングで権利を取得できないことが問題となっている。 ・Early Certainly Program (Early Certainly from search, examination and opposition)に関して、EPO自身が掲げた目標の確実な実行。
・PACE(programme for accelerated prosecution of European patent applications)がリクエストされた案件について速やかなサーチ&審査の完了。
・EPC Article/Rule
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
<-BACK
本表の見方