ベトナムにおける貿易・投資上の問題点と要望

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本表の見方
 
16. 雇用
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
日製紙
(1) VISA/就労許可取得手続の頻繁な規定変更 ・海外派遣者のVISA/就労許可取得にあたり、頻繁な規定変更についての詳細な情報を迅速に収集する事が難しく、また当局担当者による解釈の違いがある。 ・運用の一元化と取得にあたっての手続き簡素化を要望する。
日機輸
日製紙
(2) 短期の出国・再入国者へのビザ取得義務の導入 ・1ヶ月内の複数回渡航の為にビザ取得が必要であり、必要な時に渡航できないリスクがあるなど、自由な往来がしにくい。
・2015年ビザ関連法案が改正され、目的によらず1ケ月以内に2回以上の入国をする場合ビザ取得が義務化された。3ケ月マルチとしても3ケ月おきに取得申請が必要なため、コスト高及び手続煩雑化している。
・対日ビザなし渡航の拡大。
・APECビジネストラベルカードを取得すればビザ取得手続きの苦労は解消されるが、発行に6ケ月を要する。
・Law No. 47/2014/QH13
「ベトナムにおける外国人の出入国、通過及び居住に関する法律」2014年6月16日公布 2015年1月1日発効
・出入国管理法
日製紙
(3) 訪日ビザ取得手続の煩雑・遅延 ・ベトナム人の日本向けビザの取得には、本国からの招聘状(要原本)や、審査期間が1〜2週間かかるなど、手間と時間を要し、ベトナム人幹部の急な本社出張などの対応が困難。 ・訪日ビザ取得の手続き資料簡素化。
・取得審査の迅速化。
日機輸
(4) CPIを上回る最低賃金の引上げ ・労働者の生活コスト、CPI上昇率とかけ離れた率・金額で最低賃金が上昇している。徒に労働コストを押し上げ、生産拠点としての競争力を削いでいる。公務員の最低賃金は一般企業の半分ほどであり、合理性を欠く。
2015年に労働者の生計費調査の結果が公表されたが、調査対象・方法が不明。
・労働者の生活実態を正しく調査し、調査方法と結果を公開した上、妥当な根拠に基づいて最低賃金を決定してもらいたい。 ・103/2014/ND-CP
    (対応)
・ベトナム政府は2007年11月、インフレ率に応じて賃金を調整するため、ベトナムで活動するすべての企業に対する2008年の法定最低賃金を引き上げる一連の政令を公布した。それらの政令は、企業の国籍や立地する地域に基づく最低賃金を具体的に定めている。また国内企業と外国企業に対する最低賃金の二層制度(国内企業よりも外国企業に対して高い最低賃金を課している)は維持され、3つの地理的ゾーンに応じて最低賃金に少しずつ差を設けている。ベトナム政府は、WTO約束を果たし、無差別原則及び内国民待遇原則を遵守するため、2012年までに最低賃金に関する二層制度の段階的撤廃を目指している。一連の政令はまた、熟練労働者や教育程度の高い労働者に対してはより高い(未熟練労働者よりも7%以上高い)最低賃金を義務づけている。一連の政令は2008年1月1日に発効した。これに伴って、従来の最低賃金に関する諸政令は失効した。
・2009年10月30日、ベトナム政府は、国内及び外国の雇用主がそれぞれの従業員に支払わなければならない2010年の法定最低賃金の引き上げに関する政令第97号(No. 97/2009/ND-CP)及び第98号(No. 98/2009/ND-CP)を公布した。
政令第97号は、国内の雇用主が従業員に支払わなければならない月額最低賃金を現行の65万〜80万ドンから12〜23%ポイント引き上げ73万〜98万ドンにするとしている。また政令第98号は、外国の雇用主が従業員に支払わなければならない月額最低賃金を現行の92万〜120万ドンから9〜12%ポイント引き上げ100万〜134万ドンにするとしている。各々の月額最低賃金は、雇用主の所在する地域によって異なる。
法定最低賃金の調整は、2012年までにすべての雇用主が支払うべき最低賃金の統一化・共通化に向けたベトナム政府による2008−2012年の給与、社会保険、諸手当改革計画の一環をなすものである。ベトナムは、無差別、内国民待遇というWTOの原則を遵守するため、国内の雇用主と外国の雇用主の二層構造からなるベトナムの法定最低賃金体系を最終的に解消しなければならない。
・2010年9月、労働傷病兵社会省(MOLISA)は、2011年の外資企業の最低賃金を10%超引上げる最低賃金改正案を公表した。
・国家賃金評議会は国内・外資系企業の2014年の最低賃金引き上げに関する政令改正案を政府に提出した。最低賃金の月給・引き上げ率は、第1地域275万ドン・17.0%、第2地域245万ドン・16.7%、第3地域210万ドン・16.7%、第4地域190万ドン・15.2%となっており、消費者物価を大幅に上回っている。但し、景気悪化とインフレ圧力の緩和に伴い前回の2011年11月の27%〜32%引上げ率(外国企業)を大きく下回った。
・2014年1月1日、最低賃金が地域1で235万ドンから270万ドンへ14.9%引上げられた。地域2〜4でも14.3%〜16.7%引き上げられた。
・2016年1月1日より、ベトナム政府は、法定最低賃金を引き上げる。地域別の引き上げ率は前年比約11〜13%(Region 1:12.9%、Region 2:12.7%、Region 3:12.5%、Region 4:11.6%)。
・2017年1月1日より、ベトナム政府は、法定最低賃金を引き上げる。地域別の引上げ率は、前年比約7%(Region 1、2:7%、Region 3:7.4%、Region 4:7.5%)。
JEITA
(5) 従業員の最低昇給率の法定 ・ベトナムの雇用法上、従業員の給与を昇給させる場合、最低5%の昇給率を確保しなくてはならないと解釈される。
昇給率はベトナム経済状況並びに会社の業績、各従業員のPerformanceによって決められるべきであり、5%の昇給率を法律によってSecureされるべきではない。
・本法律の撤廃。 ・Decree 49/2013/ND-CP, Article 7.3.
・Decree 103/2014/ND-CP
日機輸
(6) 有期雇用契約更新の困難 ・有期雇用は、更新3回目で固定期間のない雇用契約を締結しなければならず、事業状況に則した柔軟な要員調整が難しい。 ・固定期間のない雇用契約締結の制約をなくしてほしい。 ・ベトナム労働法
    (対応)
・2012年7月2日、改正労働法が公布され、人材派遣が新たな労働形態として定義された。施行は2013年5月1日。
自動部品
電線工
日機輸
(7) 超過勤務時間規制 ・時間外労働時間数の規制が著しく厳しく、全ての労働者について、1ヵ月30時間、1年間200時間(申請により300時間)が上限となっている。24時間稼動の装置産業や開発・技術の仕事を増やしていくことが難しい。
・時間外労働規制が「1ヶ月で30時間、1年で200時間を超えては ならない」と非常に厳しく、割増率も高いことから、他国に比べ要員を多く採用しなければならず国際競争に不利。
・「時間外労働は、最長1日の勤務時間の50%を超えることはできず、8時間労働の場合は、1日4時間までの残業で、1ヵ月で30時間、年間200時間以下で規制されている(政府が規定する特別な業務のみ、年間300時間まで可)。」この水準は周辺諸国と比較して厳しい規制になっていると思われ、規制遵守のために労働者の採用を増やす必要があり、企業の競争力を低下させる可能性がある。
・規制を一元化するのではなく、職種によって多様性を持たせるよう法改正してもらいたい。
・時間外規制上限の緩和。
・ベトナム商工会議所へ申し入れしていると聞いている(報道の範囲)。
・ベトナム労働法第106条2項
・ベトナム労働法
    (対応)
・在ベトナム米国商業会議所などが残業時間上限の大幅な引上げを要請していたが、2012年7月公布された労働改正法案で残業時間上限が年200時間に据え置かれた。
日機輸
(8) 人材育成不足 ・ベトナム国内景気の減速により、2012年から工場労働者数は確保しやすくなった。しかし、ベトナムには普通高校しかなく、企業が望むスキルを早い段階からの学ぶための専門教育機関として工業高校、商業高校、農業高校、水産高校が必要である。また、大学を含め理論的な学習に偏り、実践的な教育プログラムが不足している。 ・企業での実務に見合った実践的な教育機関、教育プログラムを整備し、雇用ニーズにあった人材育成を実現してほしい。
日機輸
(9) 工業団地周辺のワーカー用住環境の不備 ・2015年にベトナム計画投資省とJICAが、在ベトナムの工業団地周辺のワーカー用住宅整備に関して現状課題を調査し、今後の政策に関する提言を行った。
現状課題の一つとして、ワーカー用住宅の分野ではベトナム国内外の不動産デベロッパーの参入が進んでいないことが提示された。その理由として、現法令の問題点(デベロッパー向けインセンティブが無い等)の指摘があった。
・ワーカー用住宅デベロッパーの参入を促進するため、2015年調査(左記参照)で指摘された問題点を改善して頂きたい。
JTA
日機輸

(10) 外国人労働者の強制社会保険への加入 ・2016年発効の社会保険法にて、2018年1月から外国人労働者もベトナム社会保険への加入対象となっているが、対象となる外国人労働者の定義が曖昧。現在、企業内異動による出向者は対象外となる案が政府で検討されているとのことだが、2018年1月に発効予定の政令もまだ出ておらず、対応に困っている。
・外国人労働者の強制社会保険義務化により駐在員に関して毎月USD290の費用負担が増加。
・外国人社会保険強制加入については、外国人本人の任意加入とするなど、法令を見直し頂きたいが、難しい場合は、外国人労働者が本国とベトナムで保険料が2重払いとなることを回避する日越社会保障協定締結を検討頂きたい。
・規制緩和に向けた働きかけをお願いしたい。
・労働法
・社会保険法(2016)
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
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