韓国における貿易・投資上の問題点と要望

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本表の見方
 
16. 雇用
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
自動部品
日機輸
(1) 労働者過保護の労使慣行・制度 ・企業の経営体力や生産性を無視した労組の賃金引上げ要求、福利処遇の改善要求等がなされる。また、処遇変更について下方硬直性が高く、労務面のリストラが進めにくい。 ・就業規則の不利益変更時の労働組合同意取得条件の廃止。
・年次有給休暇買取の法令による禁止。
・法定退職金制度の廃止。
・非正規職使用期限制限等の緩和。
・勤労基準法等
    (対応)
・整理解雇制が導入されているが、現代自動車の紛争例にみられるように、その実効性については疑問が持たれている。
・2003年7月発表された全国経済人連合会の調査によると、撤退を検討している外資企業の理由として労使関係(37%)が最も多かった。
・外国投資オンブズマンに2003年上半期に寄せられた外国企業の苦情210件中50件(24%)が労働関係であった。
・通貨危機以降、労働争議が増加傾向に転じており、2002年には年間321件と1996年の4倍の水準となっている。
・2009年3月25日に発表された2008年度第4回半期の常勤労働者の月平均賃金総額が前年同期比1.7%減と、1998年以来のマイナスの伸びとなった。
・2009年7月に発表された2010年の韓国の最低賃金(時給)は、前年比2.75%増の4,110ウォンとされ、1998年の通貨危機以来の低い伸びとなった。
・2010年8月に発表された2011年の韓国の最低賃金(時給)は、前年比5.11%増の4,320ウォンとなった。労働者委員側は、26.0%引き上げを主張していた。
日機輸
(2) 非正規職の雇用期間制限 ・有期雇用は可能だが、最長2年であり以降の更新が不可であるため、事業状況に則した柔軟な要員調整が難しい。 ・固定期間のない雇用契約締結の制約をなくして欲しい。 ・期間制及び短時間勤労者保護等に関する法律
・派遣勤労者保護等に関する法律
    (対応)
・2007年7月1日、契約社員やパート、臨時工などの非正規労働者の処遇に関する「非正規労働者保護関連法」が施行された。同法には、(1)非正規労働者に対する合理的理由のない差別処遇の原則禁止、(2)雇用期間が2年を超える非正規労働者の正規労働者化、(3)2年以上使用した派遣労働者を直接雇用への切り下げ義務化、等が規定されている。
・2008年度建議事項回答で、労働者の多数も非正規職使用期間の延長または廃止を望んでいることが判明したので、非正規労働者が職場で引き続き働けるよう法律の補完を含む総合的な対策作りを推進中であると回答があった。
・2009年4月、韓国政府は、非正規労働者の使用期間を2年から最長4年に延長する内容の法改正案を国会に提出。
・「期間制および短時間労働者の保護等に関する法律」では、有期契約労働者の雇用期間を2年間に制限し、それを超える場合は期間の定めのない雇用契約を締結したものとみなすと規定している。
日機輸
(3) 就業規則の不利益変更時の同意義務 ・韓国では、就業規則を勤労者に不利益に変更する場合には、労働組合等の同意を得ることが勤労基準法により規定されている。同意が前提であるため、労使交渉では企業側が一方的に不利になっている。
ソウルジャパンクラブから毎年建議事項として韓国政府に提出している案件である。政府側からは規定の撤廃には慎重な検討が必要という回答があり、長期検討要となっている。

・韓国の勤労基準法では、就業規則を不利益に変更する場合、労働組合等の合意を得なければならず、就業規則の改定に最大の障壁となっている。韓国へ進出している日系企業よりも「就業規則の改定内容が合理的であっても同意手続きが必要で、会社経営の重大な危機に繋がる」「定年延長義務化にも拘わらず、賃金ピーク制の導入は組合同意が必要」等のコメントがあり、勤労者への利益変更のみが担保される状況である。
・企業が経営環境の変化に柔軟に対応できるように、不利益変更時の同意義務の撤廃をして頂きたい。
・または、「利益変更」及び「不利益変更」が混在している場合で、総合的に勤労者に有利な場合や、一部の社員に「不利益変更」となるが、総合的には不利益変更ではない場合には、不利益変更に当たらないことを法令に明記していただきたい。

・企業が経営環境の変化に柔軟に対応出来るよう、労働基準法第94条第1項にある「不利益変更時の同意義務」の撤廃と、同2項に規定されている手続きの改定(雇用労働部長官への届出義務の撤廃、及びそれに代わる判断力のある司法機関での判断)をお願いしたい。
・労働基準法第94条 第1項、及び同2項
・韓国勤労基準法第94条
日化協
(4) 労使交渉における過度な要求 ・今年度は、例年の賃金交渉に加え2年に一度の団体交渉になる。過去の労使交渉において、過度な要求と妥結までの強固な状況には、加盟する労組上部団体の先導に少なからず影響を受けていると思われる。問題は上部団体の無責任な発言にある様に感じる。
現在交渉の場には、日本人は入らず韓国理事に委譲して無用な論争を回避するようにしている。
・行政を通じて上部団体への無責任な先導を回避する事ができないかを検討頂きたい。
日機輸
(5) 低成果者解雇に関する法的要件の緩和 ・勤労基準法第23条第1項の定めに基づいて、使用者は勤労者を「正当な理由」無しに解雇できないが、その基準が非常に厳しい為、現実的に低成果を事由にて勤労者を解雇するのは不可能な状況である。 ・社会通念上の納得性・合理性を揃えた場合、低成果者の解雇が出来るよう、「正当な事由」の判断基準の緩和をお願いしたい。 ・勤労基準法第23条第1項
日鉄連
(6) 駐在員就労ビザ発給の基準の不明確さ ・駐在員事務所の就労ビザは韓国人従業員を管理する立場の役職でないと発給不可との説明を受け、ビザ取得に支障をきたしているが、明確な発給基準は示されていない。 ・外国人就労法制度の整備。
    (対応)
・企業投資D-8ビザの適格者は、外国人投資促進法の規定による外国人投資企業の必須専門人材で経営や管理及び生産、技術分野に従事しようとする者であって投資者、経営者、技術者を含む。なお、技術者は国内で代替が困難な必須専門家であるとされる。2007年8月2日以降、D-8ビザ外国人に対し、在留期間が2年間延長されて5年となった。
・駐在員事務所に必須専門家として派遣される者を対象とする就労ビザD-7の外国人投資企業の「必須専門人材」の要件は、役員(Executive)、上級管理者(Senior Manager)、専門家(Specialist)となっている。
日機輸

(7) 通常賃金の定義及び計算方法の変更・不明瞭 ・2013年12月の大法院の判決により、通常賃金の計算範囲などが、これまで認識してきた雇用労働部の指針と異なるものとなり、人件費の増加に加え、過年度分の遡及について明確化されておらず、一部の企業で訴訟が起きるなど、労使間に問題と混乱が生じている。 ・従来の雇用労働部の指針通りの法整備。 ・勤労基準法等
2013年12月大法院判決
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
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