インドにおける貿易・投資上の問題点と要望

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本表の見方
 
17. 知的財産制度運用
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
JEITA
日機輸
(1) 外国出願に関する情報提供要件の不合理・不明確 ・インド出願後、特許付与まで、審査官の要求があれば外国出願に関する情報を提供しなければならず、Office Actionには、この外国の例としてUSPTO、EPO、JPOが挙げられることがある。しかし、これら3つの特許庁での情報は、出願人からの情報提供を受けなくても、ドシエシステムを使えば、審査官は入手可能であり、出願人に余計な負荷がかかっている。
情報提供が必要な国が不明瞭であり、適切な対応ができない。

・各国における特許審査情報の電子化と公衆への提供が進んでいる今日でも、外国出願の事実や審査結果などの審査情報開示を義務付ける国があり、多数国で知的財産保護を求める必要のある多国籍企業にとって、その対応負担は非常に大きい。またその義務の内容が明確でないため、将来的に意図せず義務違反となるリスクが懸念される。
・インド特許法8条により、対応他国・主要国の特許出願及び審査結果について、インド特許庁に提出することが求められており、出願人の負担は大きい。WIPO-CASEには加入し、ITシステムも整備され、近いうちに運用が始まる。
・ドシエシステムを活用し、出願人からの情報提供を不要として頂きたい。
・情報提供のしくみを継続する場合は、どの国の情報が必要であるかを明らかにして頂きたい。

・特許審査情報の電子化の進展に鑑み、外国出願情報開示義務を緩和・廃止、又は義務内容の明確化を推進していただきたい。
・関連外国出願情報提出義務の緩和・撤廃。
・ITシステム運用が開始されたら関連外国出願情報の提出を要求しないように御願いしたい。
・PCTだけでなく、パリルート出願でも、負担軽減を御願いしたい。
・インド特許法8条等
・特許法8条(2)「外国出願に関する情報」
・特許法64条(1)(m)「特許の取消」
日機輸
(2) 特許実施報告書提出に係る特異な情報提供義務 ・インドにおける特許発明の商業規模での実施の程度に関する陳述書(FORM27)を定期的に提出しなければならないが、他国には無い制度であり、特別な作業をしなければならず、負荷が大きい。
・インドでは特許の国内実施に関する情報を提供することが義務になっている。この情報は全てのインド特許について、毎年、1月1日〜3月31日の期間中に提出することが義務付けられている。(インド特許法146条)
・陳述書がどのように活用されるのか、又、提出に際して現状の運用の必然性が不明であるにも関わらず、特許権者に対して作業負荷が非常に大きいため実施報告書の提出を廃止して欲しい。
・インド国内での実施報告義務の廃止、又は緩和をお願いしたい。
・インド特許法146条(2)「特許権者からの情報を要求する長官権限」
・インド特許施行規則131(1)(2)「146条(2)に基づき提出を求められる陳述書の様式及び提出方法
・インド特許法122条(1)(b)「情報提供の拒絶又は懈怠」
    (対応)
・特許権者は、インド国内の実施とインド国外からの実施に分けて、それらの数量・金額を毎年年度末に実施報告書を作成・提出しなければならない(特許法146条(1))。また、特許意匠商標総局長官は、実施報告書として受領した情報を、所定の方法により公開することができる。
JEITA
日機輸
(3) 第一国出願義務の法令規定の不明確 ・現地開発ニーズが高まる新興国において、当該国における第一国出願義務が法令で規定されている国が依然として多いが、その法令が明確でないため、有効な知的財産権の確保が困難な場合がある。
また、多数国間にまたがる研究開発活動が必要とされる今日、複数国での第一国出願義務が抵触するリスクが懸念される。
・第一国出願義務の緩和撤廃、又は法令条文の明確な規定をお願いしたい。
・多数国間での取り決めなどにより、国を跨る研究開発への第一国出願義務の適用緩和などを推進していただきたい。
・インド特許法39条等
日機輸
(4) 国際特許分類の公報への一部未記載 ・国際特許分類(IPC)に関して公報に記載されていない案件も散見される。 ・特許情報の欠損の改善。
日機輸
(5) 特許早期審査制度活用の困難 ・インドの早期審査制度は2016年に導入されたが、諸々の規制からインド国内企業にしか活用できない制度となっているため、今後の改善が望まれる。 ・早期審査制度の要件の緩和。
日機輸
(6) 特許出願公開の遅延 ・依然として公開遅延案件があり、古い案件ほど公開が遅くなっている。 ・特許出願の適時の出願公開。
・引き続きDIPPによる指導を希望する。
製薬協
(7) 医薬品分野で期待できない知財保護 ・医薬用途特許が認められない点については引き続き改善を求めたい。特許訴訟における権利行使(差し止め)及び強制実施権については改善が認められるものの引き続き動向を見ていきたい。 ・TRIPS協定に従い、技術分野並び輸入か国内生産かで差別することなく特許を認めて頂きたい。 ・インド特許法第3条及び第84条
日機輸
(8) 実用新案制度の導入における制度設計への懸念 ・実用新案制度の導入が積極的に検討されていると聞いている。
また、その理由の1つとして、特許審査の滞貨解消が挙げられている。実用新案制度における簡易な審査により、不安定な権利が増加し、権利濫用が懸念される。
・もし、実際に実用新案権制度が導入されることになる場合には、実用新案権者が権利行使する際には技術評価書の提示を義務付ける、実用新案権の保護対象を明確化する(例えば物品の形状に限る)などの対策を要望する。
製薬協
日機輸
(9) 模倣品取締り対策の不足 ・偽造医薬品は、単に知的財産権(特許権、商標権)の侵害である以上に、患者に深刻な健康被害をもたらす場合も多いため、偽造医薬品を患者の手に届くことがないよう取り締まることが重要である。中国、インド等で製造された偽造医薬品が、自国内で流通するだけでなく広く他国にも輸出されている。
・市場における模倣品氾濫の抑止効果を強化するため、模倣品販売者または製造者に対する刑事訴求手続の迅速化及び処罰決定の期間の短縮化をできないか。行政摘発(救済)制度を導入したり、特別な裁判所を設置したりして、当該違法行為に対する短期間での処罰ルートを確立し、摘発(救済)ルートを多様化することで、模倣品氾濫を抑止することを提言する。
・偽造医薬品の製造販売、輸出の取締りを強化して頂きたい。
・市場で流通する模倣品対策。
・刑事訴求手続の迅速化及び処罰決定の期間の短縮化。
日機輸
(10) 商標案件における審査の遅延/停滞 ・最近の出願審査については、長期未審査の割合が減少しており、概ね2年以内の登録となっているため、改善が図れていると感じる。一方で、古い案件では、現地代理人から審査完了の報告を受けているにも関わらず、5年以上登録証が発行されてない案件等が存在する。
※参考:過去5年に出願した案件(21件)のうち、19件は出願から2年以内に登録されている。残りの2件は、ノーアクションで2年以上動きがない。
・出願日が2010年以前の出願件につき、審査停滞案件が依然として存在する。これらの件の即時進行を希望する。 ・インド商標法21条(2)
・出願審査運用
日機輸
(11) 特許庁の制度運用の不十分・不透明 ・法令上の明確な規定がない一方、審判部での判決や特許庁の指針に基づいて、全てのインド特許出願について、発明者から会社への譲渡証又は所有権を証明する書面を提出することが必要であると、現地弁護士から要求されている。 ・譲渡証提出の緩和又は不要を法令規定に明記して頂きたい。
または、所有権を証明する書面の要件、記載内容を簡素化し、現地の弁護士が容易に作成し、署名できる内容に改めて頂きたい。
日機輸
(12) PCT出願の優先権証明書の翻訳要件の煩雑 ・特許規則21(2)に基づいて優先権証明書の翻訳を求めることは適切ではない。当該規則は、国際段階において優先権証明書が提出されておらず、また、その後国内段階で提出されたとしても、それが英語ではない場合に翻訳を求めるものである。 ・PCT出願の優先権証明書の翻訳手続の簡素化。
・PCT出願の優先権証明書を求める運用を停止してほしい。
・特許規則21(2)
日機輸
(13) PCT国際調査に関する審査協力合意の未締結 ・日本国特許庁は、以下の国で受理されたPCT国際出願について、出願人の希望があれば日本国特許庁が国際調査報告を作成・提供することができる。
JPOは、我が国企業のグローバルな事業活動の支援のために、アジアでの管轄国を拡大する意向。
※現在JPOの管轄国は、日本、韓国、フィリピン、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシア、アメリカの9か国。
インドはJPOと上記協定を結んでいない。
仮に協定があれば、今後インドで現地発明が生まれ、英語で明細書が作成された場合、英語PCT⇒インド特許庁か国際事務局WIPO受理官庁⇒JPO国際調査というルートで品質を確保するということができるのではないかと思う。
※PI名義の場合JPO受理官庁は選択できず、インドかWIPOへの出願になる。
※当社のマレーシアやシンガポールの現地発明(冷機のコンプレッサー)では、上記ルートでPCT出願し、協定を活用してJPOが国際調査している。
・PCT国際調査に関する日印特許庁の審査協力が望まれる。 ・日印の特許審査に関する協力協定
日機輸

(14) 特許出願国の優先順位 ・インドでの特許出願につき、インドを本国指定した後でないと日本で出願が出来ないためコスト増となる。
「パリ条約(工業所有権保護に関する国際条約)加盟国(含;日本/インド)であれば、一旦日本国内で出願してから他国に出願する形も可能であるが、発明者にインド人が含まれている場合、この形では発明者(インド人社員)が海外に技術を持ち出したとして、インド特許法違反になってしまう。
・インド国内工業所有権法の見直しが必要。 ・工業所有権法
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
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