タイにおける貿易・投資上の問題点と要望

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本表の見方
 
17. 知的財産制度運用
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
JEITA
日機輸
(1) 知的財産権保護の不十分 ・模倣品への政府の対処は、以前に比べると改善はされたもののまだ不十分。知財保護条約(PCT、マドプロ等)への加盟が進んでいない。 ・販売現場、製造工場、水際での取締の強化、厳罰化を望む。
    (対応)
・2008年、タイはパリ条約加盟。
・2009年12月、タイはPCT(国際特許協力条約)に加盟。
・マドリッドプロトコル加盟は、すでに国会で承認されており、商標法改正待ち。
・インラック政権下で商標法改正法案が国会に提出されたが、政治的混乱により廃案。
・2017年8月7日、タイは、マドリッドプロトコル加入書をWIPOに寄託し、2017年11月7日に発効することとなった。
日機輸
(2) 世界公知公用の未規定 ・タイでは、新規性の要件として、出願前に発明が国内の公知公用でないことだけが規定されている。そのため、タイ以外の国では公知である発明が、タイでは特許権が付与されるという問題点があった。 ・世界公知公用の採用はグローバルスタンダードになってきており、最近では中国でも世界公知公用が採用されている。世界公知公用の採用を検討してほしい。 ・タイ特許法5条、6条
日機輸
(3) 自発的な特許分割出願不可 ・審査官が複数の異なる発明があると判断した場合しか分割出願をすることができず、出願人は自発的な分割出願を行うことができない。 ・出願人が自発的に分割出願できるようにしてほしい。また、拒絶査定時、特許査定時にも分割出願できるようにしてほしい。 ・タイ特許法26条
日機輸
(4) 出願公開時期に関する規定の不備 ・タイでは、出願公開時期の明確な規定がない。また、審査請求時期は出願公開公報発行日から5年以内と規定されている。そのため、出願した後に審査請求期限を容易に把握できない。 ・ほとんどの国で出願公開時期は出願日が基準として規定されており、更に審査請求時期も出願日基準になっている。出願公開時期を明確する規定の新設と、審査請求時期を出願日基準にする改正を検討してほしい。 ・タイ特許法29条
JEITA
日機輸

(5) 模倣品の取締り不足 ・ハードだけでなく映画・音楽・ゲームなどソフトウェアの模倣品が依然として流通している。
・模倣品への政府の対処は、以前に比べると改善はされたもののまだ不十分。
・ハードだけでなく映画・音楽・ゲームなどソフトウェアの模倣品についても、販売現場、製造工場、水際での取締の強化、厳罰化を望む。
    (対応)
・偽ブランド品の輸出および輸入は禁止されている。
・1999年TRIPS遵守のために特許法制度が改正された。
・2000年6月、TRIPS遵守のために商標法が改正された。
・国際的な圧力に対応して、タイ商務省(MOC)は、積極的に市場から侵害品を排除するよう試みている。
・2002年4月、営業秘密法が制定された。
・2003年現在、タイ政府は、知的財産権法(特許法、著作権法、商標法、集積回路保護法、企業秘密法、植物品種保護法)を制定し、TRIPs、WIPOやベルヌ条約等、国際条約に加盟している。
・2003年1月、盤谷日本人商工会議所とJETROバンコクセンターによる共同調査によると、商標権侵害71.8%、意匠権侵害60.4%でいわゆるデッドコピーによる侵害がほとんどであった。
・2005年1月1日、CDの生産を監理するthe 2005 CD Production Actが施行された。同法により、CD生産者は政府当局にその生産の詳細(機械所有者、CD生産に用いられる原材料の量を含む)を報告しなければならない。
・知的財産省は知財登録処理時間を迅速化するため、2006年に電子申請措置を導入することを目標としている。
・2006年12月3日、MOCは会計年度2006-2010年の知的財産省の戦略を公表した。運営戦略は以下を含む。
−The IP Law Reform Planの作成
−IP登録の電子システムの開発
−いくつかの国際条約、すなわちパリ条約、特許協力条約(PCT)、マドリッド議定書への加盟国となる必要なステップの作成
・2007年1月25日、保健省は、海外企業が特許を有するエイズや心臓疾患など2種類の治療薬を許諾なしに独自生産すると表明し、特許の強制実施権を発動するとした。
・米国USTRの「2007年スペシャル301条報告書」で、タイ政府が一定の特許権を持つ医薬品に対して、強制実施権の発動を決定したこと、海賊版・模倣品対策が不十分である、等を理由として、タイへの警戒レベルが「監視国」から「優先監視国」へ引上げられた。「2008年スペシャル301条報告書」でも、依然として「優先監視国」に掲げられている。「2011年スペシャル301条報告」においても引き続き「優先監視国」に据え置かれている。WIPOインターネット条約実施の法改正が立法化されていないことや、模倣品販売等の店舗の地主の責任や劇場での盗撮、税関職員の差し押さえ権限などの法律の未整備などが理由。
・国家知財権執行センター(NICE)は、知財侵害品調査取締WG等6つのWGを発足させ知財侵害取り締まり強化に向けた活動を進めつつある。
    (改善)
・2016年7月28日、改正商標法が発効、マドリッドプロトコルへの加盟に道筋をつけると共に、加盟準備として法的基盤を整備するべく新たな規定を追加した。
・2017年8月7日、マドリッドプロトコル加入者をWIPOへ寄託し、2017年11月7日に発行する予定となる。
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
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