インドネシアにおける貿易・投資上の問題点と要望

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本表の見方
 
17. 知的財産制度運用
経由団体※
問題点
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈
要望
準拠法、規則、運用
日機輸
(1) 出願人による自発的な外国出願資料の提出不可による審査の遅延 ・インドネシアでは、特許出願から審査までに平均6、7年かかっている。 ・出願公開期間が終わるまで実体審査が開始されない規定(特許法51条)を廃止してほしい。
・権利者が自発的に対応外国出願の審査結果を提出することによって、審査を迅速化するような運用を図ってほしい。
・ASPECやPPHを利用した早期審査の申請に対して迅速な対応を図ってほしい。
・インドネシア特法51条57条
日機輸
(2) 拒絶査定時に分割出願不可 ・出願人は、特許査定時および拒絶査定時に分割出願することができず、査定後に適切な特許権獲得のための手段が限られる場合がある。 ・特許査定時および拒絶査定時に分割出願できるようにしてほしい。 ・インドネシア特許法38条?
    (対応)
・特許法(2001年法律第14号)第36条において、特許出願の分割は、原出願に対して特許付与の決定(第55条(1))または拒絶の決定(56条(1))が下される前までできると規定されている。
JEITA
日機輸
(3) 高い特許出願コスト ・インドネシアの特許庁費用が高額である。特に、特許登録時に出願係属件数分の累積での出願維持年金を支払うが、年金額が高額である。 ・出願中の維持年金の廃止、又は減額を進めていただきたい。
日機輸
(4) 特許料年金未納による権利放棄の制度 ・特許料年金納付停止後、3年間権利が維持され、その間の年金費用及び追徴金が出願人に課され、支払い義務が発生すること。
米・欧といった主要国においては一般的に年金未納後、一定の追納・復活期間が設けられ権利放棄となるため、出願人が意図せず権利が存続するという事はない。
年金未納による権利放棄の運用を採用しているため、インドネシア案件についてのみ権利放棄の請求を行うためにはシステムの変更に加え、案件毎に権利放棄を請求する作業やコストの負担も発生する。
・権利放棄の規定を主要国に合わせ、年金の追納・年金不払いによる権利遡及消滅の制度を導入して頂きたい。 ・インドネシア特許法 
第88条
第89条
第90条
第115条
第116条
日機輸
(5) 特許年金支払いの延長申請義務 ・年金の支払期限の7日前までに延長申請がなければ支払期限を延長できない(128条)。権利者がパリ条約5条の2の追納規定のメリットを実質的に享受できず、年金管理の負荷が大きい。
・特許年金の支払期限の7日前までに期限の延長を申請しないと特許年金の追納ができない。事前申請をしていない状態において特許年金の支払い期限を過ぎてしまうと年金の追納(支払期限の延長)ができなくなってしまう。特許年金の支払期限の延長を認めなければならないと規定したパリ条約5条の2のメリットを実質的に享受できない可能性がある。
・支払の延長申請義務を廃止し、追納期間(納付期限から12月)であれば事前の申請を要せず追納を可能として欲しい。
・他国のように事前申請をしなくても特許年金の追納が可能になるよう、特許法の運用を緩和したり、特許法を改正したりしてほしい。
・インドネシア特許法第126条、第128条
・パリ条約5条の2
日機輸
(6) 特許年金の支払期限 ・年金の支払期限が保護期間の出願相当日の1月前までと規定されている(126条)。出願日や登録日が支払期限として規定されている米国や欧州、中国等、他の主要国の支払基準と異なるため年金管理の負荷が大きい。 ・年金の支払期限を出願相当日として欲しい。 ・インドネシア特許法第126条、第128条
製薬協
(7) 特許権者に対する国内実施義務と、医薬品輸入の効力除外 ・2016年改正特許法は、特許権者に国内製造義務を課し(特許法20条)、この義務違反を特許無効理由とする(132条)。また、他国で合法的に販売されている医薬品を輸入する行為に特許権の効力は及ばないとする(167条) ・TRIPS協定に従い、輸入か国内生産か、又は、技術分野で差別することなく、特許を保護して頂きたい。 ・インドネシア特許法20条、132条、167条
JEITA
日機輸
(8) 知的財産権情報の開示不十分 ・権利化・権利活用ニーズが高まる新興国において、裁判・訴訟件数等の統計情報や出願データベースの整備が不十分のため、正確な他社特許リスクを把握できない。 ・先進国特許庁との連携協力を進め、早期DBの整備を進めていただきたい。
    (改善)
・インドネシアにおける出願数等の統計情報は、インドネシア知的財産権総局(DJHKI)のウェブサイトhttp://www.dgip.go.id/に掲載されている特許、商標、意匠、知財出願件数等知的財産関連の統計資料にて確認することができる。
・2016年7月19日、日本の特許庁はインドネシア特許当局との間で相互に特許情報を交換することで合意した。
製薬協
(9) 強制実施権の発動 ・医薬品の価格低下/保険財政の問題解決を意図した強制実施権の発動の動きがある。インドネシアの改正特許法には、強制実施権一般についての81条〜92条に加えて、ヒトの疾患の治療のために国内で特許医薬品を製造する強制実施権の発動を許容する第93条が設けられた。 ・TRIPS協定31条の条件を満たさない、安易な強制実施権の発動は止めて頂きたい。
・強制実施権発動の基準や手順を明確化していただきたい。
・TRIPS協定31条
時計協

(10) 商標権に関する問題点 ・商標不使用取消し手続きにおいては、請求側が相手側の「不使用」を立証しなければならないとされているが、「使用」の立証はできても「不使用」の立証は困難である。
・商標データベースに不備・欠落が多く、調査結果の信頼性が劣る。
・請求側の立証義務をなくしてほしい。多くの国のように、被請求人が「使用」を立証するような制度を望む。
・データベースの精度を上げてほしい。
 

※経由団体:各個社の意見がどの団体を経由して提出されたかを表したものであり、表示団体を代表する「主張」「総意」等を意味するものではありません。
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