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アジア投資関連制度ニュース5月号より


MFTEC、中国尾WTO約束に関し米国に忍耐を求める

 中国政府の前WTO専門家は、2002年4月9日にワシントンで開催されたアジア・ソサエティーの会合において、様々なWTO約束を遵守する中国の作業に対し忍耐を国際社会に求めた。中国対外貿易経済協力部(MOFTEC)WTO司で副司長を務めていた張向晨氏は、中国政府のWTO約束実施戦略の全体像及び中国における政治的・地政学的利益の評価について発表したが、これらはWTO約束を後支えするために中国政府の努力を引き続き要求するものである。
 張氏は、約束実施努力の初期にある中国政府に悲観的な評価を下すのはまだ早すぎると述べた。同氏は、15週間は「課題を遂行するのに足る時間ではない」ことを強調した。中国政府は様々な約束を成功裡に実施する能力があると特に指摘した。加えて張氏は、急速なGDP成長が市場の開放や貿易の自由化が伴うことを一因として、政府関係者は積極的になっていると述べている。氏は、1%のGDPの成長は、中国市民にとっては100万人の雇用となる可能性があるとしている。

 張氏は、4月17日のアジア・ソサエティーの会合の参加者に対し、中国政府のWTO約束遵守に向けた努力は、軌道に乗ってはいるが、国内からの政治的反対のため、一部の分野では遅滞を来していると述べた。張氏は、自らが加わった中国のWTO携帯電話市場アクセス約束の一部を取り下げるよう中国政府に圧力を掛けている国内の携帯電話関係者との交渉を説明した。携帯電話への関税賦課を継続するようにとの国内メーカーからの圧力に関わらず、張氏は、政府はWTOとの従前の約束を再交渉することはできず、携帯電話の輸入に関する関税は引き下げなくてはならないとメーカーに話している。携帯電話に関する関税は現在、加盟前の平均である12〜15%から0%に引き下げられている。
 張氏は、政府はWTO加盟の利益を国内に与え、一方でより活気のある沿海地方の市場のニーズ及び利害に応えなくてはならないという大変な重圧の下にあるとも説明した。中国の中央政府は、地方の利害関係者のニーズにも応えようとしているが、WTO約束の実施は中央政府の管理下に置かれなくてはならず、中央政府は、地方当局が中国が取り組んでいる実施努力の詳細にまで過度に立ち入ることを許してはならないと氏は述べている。張氏はまた、MOFTECは中国のWTO約束遵守作業に関する省庁横断的な協調において引き続き中心的な役割を果たすであろうと述べた。
 張氏は、米中貿易関係の様々な面に関して、参加者からの多くの質問に回答した。氏は、以下の所見を述べた。
  • 中国は、米国との二国間交渉でいくつかの極端な譲歩をしている。同氏は、中国が米国のAD法の下で非市場経済(NME)の待遇を受けることに合意したのは、中‐米二国間合意が公正でなく、多くの条項が単なる交渉上の妥協として定められた証拠であると指摘した。
  • 中国の農業分野は、中国政府がWTO約束実施努力を進めるに当って、最も多くの問題を引き起こすと思われる。中国の朱鎔基首相は、農業分野は、その10億人の従事者とともに、「大きな頭痛の種」であることを認めている。
  • 中国の農業に関するWTO約束は誇張されている。農業に関する比較的控えめな約束の一例として、張氏は、中国は穀物市場の5%を外国からの輸入に開放すると約束したに過ぎないと述べている。
  • 中国の農業市場は、中国には農業組合(farmer association)がないため、歪曲されている。従って、価格は非常に低い。
  • 中国政府全体の加盟後の戦略は、農業を基盤とする経済から工業に根ざす経済に中国を移行させることである。

 張氏のアジア・ソサエティーにおけるMOFTECの「巡回宣伝」は、ある意味、WTO約束の実施努力が遅いとの当初の批判に関わらず、中国政府は実施に懸命に取り組んでいるとのメッセージを発することを目的としていた。張氏は、携帯電話及び農業分野が迅速且つ成功裡のWTO約束実施において遅延を来す可能性があると強調した。あるいは、張氏の訪問は、中国政府は自国内の政治的利害によって後退させられることはなく、約束を実施するためのファーストトラックにあることをワシントンの中国監視者に確認させることを目標としていたのかもしれない。中国のWTO加盟後数カ月間の困難に関わらず、長い目で見てほしいとの張氏の呼びかけは受け入れられているようである。来年同氏がより多くのことを語ってくれることを期待したい。

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