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アジア投資関連制度ニュース2002年2月号からの抜粋

WTO加盟後の中国

 2001年12月のWTO加盟以来、中国は、ジュネーブにおける交渉において、一層自らの意見を明確にしてきている。中国は、ドーハにおいて立ち上げられた新ラウンド交渉の体制の設立、並びにサービスの貿易における緊急セーフガード措置の必要性に関し、強硬な、むしろ物議をかもし出すようなポジションを取っている。
同時に、中国政府は、WTO約束の実施プロセスにおいて必要な改革に関する困難に直面し続けている。中国のWTO約束の多くは、明らかに適切な国内での省庁横断的コミュニケーションのないまま結ばれているため、その遵守は、一層複雑になっている。米国を始めとするWTO加盟国の一部は、中国の約束遵守に向けた努力を監視するための人員を増強してきている。

T.中国、WTO交渉で自己主張

 中国は、WTO加盟国として、2月初頭のドーハラウンド交渉の手続に関する協議において、積極的な役割を果した。1月28日に開催された、貿易交渉委員会(TNC)の最初の会議は、コンセンサスを形成することができず、頓挫した。中国は、パキスタンやアフリカグループといった発展途上国の支持を受け、権限を様々な委員会の議長から加盟各国の下に方向付けるよう、手続上の変更を獲得することができた。
 2月1日、WTO加盟国は、ドーハラウンド交渉に関する以下の決定を確認した。
・ WTO事務局長は、2005年に予定された交渉終了まで、TNCの議長を務める。
・ TNCは、その下部組織として7つの交渉グループを持つこととし、それぞれに議長を配する。これらの議長は、2002年3月までに、主にジュネーブ常駐大使から選ばれる 。
 中国のスタンスは、交渉において通常の慣例となっている、議長によって作成された「受け入れ不可能な」妥協テキストに基づいて作業を進めることの阻止を目指していた。しかしながら米国は、最終的なTNC手続きは、交渉グループの議長が最終的妥協テキストを案出するに当たり、多少の柔軟性を与えるべきであると主張した。最終テキストは、議長ドラフトには「論点に関する様々なポジション」を含むことを要求している。
 WTO事務局長が2005年までTNCの議長を務めるという決定に関しては、中国は加盟国からの議長を選好して強く賛成の意を表していた。しかしながら、中国はこの問題に関するコンセンサスを妨害することはなかった。
 また、中国のGATSサービス交渉への最初の参加においては、中国は、サービスの貿易における緊急セーフガード措置の必要性を支持する一部の発展途上国の議論に与した。ほとんどの先進国はこのメカニズムに反対しているため、サービスのセーフガードの問題は、論争の的となっている。GATS交渉のマンデートでは、枠組作りに2002年3月15日の期限を設定しているが、この期日は延期されると見られている。
参考:TNCに関する途上国提案(TN/C/W/2

U.米国、中国のWTO約束遵守に対するモニターを強化

 米国は、中国のWTO約束実施を監視する人員を大幅に増強してきた。米国商務省がこの実施努力を調整すると見られており、ワシントンD.C.及び北京の米国大使館、並びに中国におけるその他の事務所に新たなスタッフを増員している。
 米国政府関係者は、中国のWTO約束条項の多くは、WTOパネルに持ち込まれる前に、いくらかの成熟期間が必要であると認めている。米国政府関係者は、中国がWTO約束の実施に遅れ続ける場合は、公式なWTOの紛争解決手続きに訴える意向を示している。同時に、中国の公務員向けの技術援助プログラム及び教育を支持するとも述べている。米国の関係者は、中国に対する二重アプローチはコミュニケーションを増加させ、貿易紛争の激化を防ぐことになろうと主張している。
 ジョージ・W・ブッシュ米大統領は、2002年2月21及び22日の中国首脳との会談において、WTO約束の実施の必要性を提議すると予想される。

V.中国、WTO約束を遵守するための国内規則を導入

バイオテクノロジー及び農業
 中国は、輸入及びバイオテクノロジー応用製品の表示に関する規則など、WTO約束を遵守するための多くの新たな実施規則を導入した。米国政府関係者は、既にこれら個別の規則に関する懸念を表明しており、2月6日、北京で中国の農業部及び外交部の職員と規則に関する会談を行っている。米国産業界は、現行の規則が輸出業者及び輸入業者に透明性のある枠組みを提供できていないという意見である。生産品のおよそ20%を中国に輸出している米国の大豆輸出業者は、中国のバイオテクノロジーに関する諸規則を特に詳しく監視している。これらのバイオテクノロジー規則は、中国のWTO加盟により創出された新たな機会からの利益を期待している米国のトウモロコシ及び綿の輸出業者にも影響を与えることが考えられる。
銀行

中国は、最近新たな銀行監督機関を設立した。非効率的な中国の銀行システムをいかに監督するかに関する数ヵ月にわたる議論を終えて、2002年2月初めに中国の最高金融委員会は、中国人民銀行の指導下に置かれる監督機関を設立することを決定した。

 WTO新規加盟国として、中国は、自らを発展途上国及び先進国の間でリーダーとして主張してゆくと思われる。ドーハ開発アジェンダに向けた基本原則に関する今月の交渉の中国の積極的なスタンスは、中国は自らの利害を存分に主張する意向であることを示唆するものである。一部のオブザーバーは、中国は、最近の議論においてWTO加盟国というよりむしろ国連加盟国のように振舞っていると論評している。ジュネーブの関係者の多くは、中国がドーハ交渉プロセスを妨害し続けることに危惧の念を持っている。
 中国のWTO加盟は、中台関係も変化させている。2002年2月15日、台湾は中国との直接の貿易に関する特定の規制を緩和し、特定の農産品及び工業品に対する輸入禁止を解除した。特に、貿易は第三国を経る必要はなく、台湾および中国の銀行は、直接送金をすることが認められるようになる。

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